香りのよいコーヒーを味わいながらの心地よいひと時を後にしようと立ち
上がるとロビーにひっそりと奉られた黒光りする木彫の「八臂弁財天」に
心奪われた。白く麗しい妙音弁才天とはあまりにかけ離れて八本の手
に宝珠・宝棒・宝前(矢)・宝刀・宝弓などを携え戦う武将のように雄雄
しい弁才天なのだ。鎌倉初期の作で源頼朝が鎌倉に幕府を開く時に、
藤原秀衝調伏祈願の為に勧請せしめた像だという。女神に武器を持た
せて守り神にするなんて・・・本来美しい裸体に琵琶を抱えていた神な
のに・・・そう思った時にhermaphrodite (男女の両性質を持つ人間)の
言葉を思い出した。
はるか昔の私・・・女であるがゆえの唄を唄うことが辛くなった時、苦界
に沈む遊女の心を唄った三味線唄の多くは男が作ったことを知り、これ
からは男女に拘ることなく人間本来の心根を唄って行きたいと思ったこ
とがあった。
歌舞伎だって出雲の阿国が若衆に傾いて現在に至っているし、芸者の
元祖の深川芸者だって男と同じ様に黒い羽織を着て、男名前のべらん
めいだったし、ジャズシンガーのビリーホリデイだって男名前だった・・・
今年は夢か現かなんて漂っていないでひとつタイガーでゆきますか・・・
そう思いながら白金の自宅に戻ると白石かずこさんから賀状が届いて
いた。
美しくやさしい布咏さんの心と芸は強い元気なTiger だからこそやって
ゆけるのです 詩もそうです 今年もどこかでTiger tiger しましょう
(2010年1月15日))
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